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流星ビデオ観測のはじめ方
流星をPCに接続したビデオカメラで観測することにより、正確な位置や明るさを知ることができ、複数地点からの観測データを突き合わせることで軌道を求めたりすることもできる。
多くのデータが集まれば色々なことが解明できる可能性がある。
その魅力について書かれているページは多く存在するが、具体的に何を用意してどのように始めたらいいのかまとまったページは見つけることができなかった。
筆者は2021年9月、PCしかない状態から必要なものを揃えて流星のビデオ観測を始めたので、機材や設定方法について金銭的な部分も含めて具体的に記そうと思う。
金額については執筆時のもので、今後変動したりカメラ等が廃番になったりする可能性もある。
※ネット通販へのリンクを多数張っていますがアフィリエイトはありませんのでご安心ください。
1.必要なもの
下記すべて併せて63,207円であった。
1.1.PC
筆者は普段使いのPC(Windows10)と併用している。
流星観測用にSSDを増設(Crucial 1TB 9,980円@Amazon)、SATAケーブルが不足したので購入(Owltech 2本 2,110円@Amazon)。
1.2.ソフトウェア
動体監視ソフト「UFOCaptureHD2」1ライセンス 26,400円
1.3.カメラ
AR-MHD8206RH 3,282円@Aliexpress
こちらも外観は異なるが中身は同じで性能は同等と思われる。
1.4.変換器
フォーラムで評判のよかった製品(2ch 1080pを選択) 11,219円@Aliexpress
(2022/2/12追記)
その後、上記の2ch 1080pが売り切れていたのでこちらも試してみた。
デザインが違うものが届いたが、機能的には問題なかった。
(2022/7/13追記)
上記製品は高温になるとノイズが乗ったり映像が止まったりするトラブルがあった(トラブルがない個体が多い)。
また、上記製品付属のUSBケーブルは品質があまり良くない可能性がある。不調の出たものはこちらに交換している。
1.5.映像&電源ケーブル
楽天市場で20mのケーブルを購入してみた。 4,950円+沖縄への送料2,500円@楽天市場
検索すると、このように安価なものも出てくる。網線の密度などが違うらしい。
今後、増設時に試してみたい。
(2021/11/9追記)
→カクつき・ノイズが発生するが観測・解析は可能だった。映像が綺麗でないのでオススメしない。
また、上記カメラには電源アダプターが付属していなかったため購入。 1080円@Amazon
あまり安いものはノイズが乗りやすかったりするらしいので注意。
1.6.工具その他
・板材(カメラ架台):ホームセンターで加工料込で300円以下
・ウレタン塗料:ホームセンターで200〜300円程度だったと思う
・クランプ(架台の固定):443円×2@Amazon
・木ネジ(カメラを板材に固定する):ホームセンターで100円以下
・絶縁テープ(配線接続部に使用):ホームセンターで100円以下
を購入。
その他、電動ドライバーおよび精密ドライバーを使用。
2.設置前準備
2.1.架台の制作
カメラにはコンクリートプラグが付属していたが、賃貸でコンクリートに穴を開けるわけにいかなかったので、木材で架台を作ってクランプで固定することにした。
木材2点をネジを使ってL字に組み立て、ウレタン塗料で防水処理をした。
2.2.赤外線照射の無効化
このカメラは暗い場所でも撮影できるよう、夜間に赤外線を照射するようになっている。
それにより虫が集まる&照らされることで、流星観測の妨げとなってしまう。
カメラ前面からカバーを外し、赤外線ライトにつながる給電ケーブルを外す(下図)。
赤外線機能の再使用を考慮しなければケーブルを切断してもよい。
中央やや上、黒赤のケーブルがそれである。
3.接続
カメラ、映像ケーブル、電源ケーブル、変換器、PCをつなぎ、UFOCaptureのPreviewモードで映るかどうか確認する。
ついでに下記4.1の設定を行う。
屋外のケーブル接続部はビニールテープで防水処理をする。
巻き方はこちらを参考にした。
4.設定
4.1.カメラの設定
筆者が購入したAR-MHD8206RHでは下記のようになっていた。
変更点を赤字で示す。
MAIN MENU |
1.LENS |
MANUAL |
2.EXPOSURE |
1.SHUTTER |
AUTO |
2.AGC |
15→12 |
3.SENS-UP |
AUTO→OFF |
4.BRIGHTNESS |
35→50(見た目の変化だけで検出には影響なし?) |
5.D-WDR |
AUTO→OFF |
6.DEFOG |
OFF |
3.BACKLIGHT |
OFF |
4.WHITE BAL |
ATW |
5.DAY&NIGHT |
EXT→AUTO |
1.D→N(AGC) |
204 |
2.D→N(DELAY) |
1→30 |
3.N→D(AGC) |
80 |
4.N→D(DELAY) |
1→30 |
6.NR |
1.2DNR |
MIDDLE→OFF |
2.3DNR |
MIDDLE→OFF |
7.SPECIAL |
1.CAM TITLE |
OFF |
2.D-EFFECT |
1.FREEZE |
OFF |
2.MIRROR |
OFF |
3.NEG.IMAGE |
OFF |
3.MOTION |
OFF |
4.PRIVACY |
OFF |
5.LANGUAGE |
ENG |
6.DEFECT |
1.LIVE DPC |
ON→OFF |
2.WHITE DPC |
ON→OFF |
3.BLACK DPC |
OFF |
7.RS485 |
1.CAM ID |
0 |
2.ID DISPLAY |
OFF |
3.BAUDRATE |
38400 |
8.ADJUST |
1.SHARPNESS |
OFF |
2.MONITOR |
LCD |
1.GAMMA |
USER→1.0(USERにすると流星が多く映るらしいが非推奨) |
2.BLUE GAIN |
50 |
3.RED GAIN |
50 |
3.LSC |
ON→OFF |
4.VIDEO.OUT |
NTSC |
4.2.UFOCaptureの設定
筆者は下図の設定で観測している。
4.3.PCの時刻合わせの設定変更
PCの時計は意外とずれるものらしい。
Windows標準の時計合わせは調整間隔が長く、そのままでは流星観測にとって大きな問題となる。
時計合わせの設定を変更する。
・デスクトップの右下の時計を右クリック
・日付と時刻の調整
・日付、時刻、地域の書式設定
・日付、時刻、地域の追加設定(「時計と地域」ウィンドウが出る)
・日付と時刻の設定(「日付と時刻」ウィンドウが出る)
・「インターネット時刻」タブ
・設定の変更(「インターネット時刻変更」ウィンドウが出る)
・サーバーを ntp2.jst.mfeed.ad.jp などとする(regfedit で time.winodws.comを探して書き換えてもよい)
・「regedit」を検索して実行
・HKEY_LOCAL_MACHINE > System > CurrentControlSet > Services > W32Time > TimeProviders > NtpClient
・SpecialPollIntervalを600に変更
・HKEY_LOCAL_MACHINE > System > CurrentControlSet > Services > W32Time > Config
・UpdateIntervalを600に変更
・コントロールパネル > 管理ツール > サービス
・Windows timeをダブルクリック
・「スタートアップの種類」を「自動(遅延開始)」にする
参考:SonotaCo.JP :: トピックを表示 - 九州本島以南の観測域
4.4.ホットピクセルマスクの作成
ここで取り上げた防犯カメラは安価だが、ホットピクセルが多数あり、解析に支障が出る場合がある。
時間が経過しても動きのないマスク(ホットピクセル)の領域マスクを作成する。
・十分暗くなってから(天文薄明終了後)(月のない夜が好ましい)、それぞれ5分以上間隔を空けて4〜5回手動キャプチャする。このとき、晴れていなくてもよい。
・DBシートで上記で作成したクリップ左側のチェックボックスをクリックしてオンにする
・Inputシートで DetectAreaの右のEditボタンを押す
・Detect Area Editor が表示されるので これまでの領域ファイルが表示されていることを確認し、コントロールキーを押しながら Auto Setのsetボタンを押す
・確認ダイアログが出るので OKを押す。これで チェックした全クリップに共通するシンチレーションマスク (動かなかったもの) が領域マスクされる
・saveを押して保存し、Detect Area Editor を終了する
参考:SonotaCo.JP :: トピックを表示 - UA2のProfile/Analyzeの設定について
5.観測
特にすることはないが、普段使いのPCでは観測中はCPUに負荷がかかる作業は控えるようにする(コマ落ちが起こりやすくなる)。
WEBサイトの閲覧程度なら問題ないが、ゲームや動画、音楽の視聴は避けたほうが良い。
放置する際はReplayモードにしてモニターの電源を切る。
夏季は部屋の温度に注意(筆者は冷房をつけっぱなしにしている)。
Operationシートから、録画時に音が鳴るように設定できる。なかなか楽しい。
6.分析
UFOAnalyzerを用いて分析する。
筆者環境のプロファイルは以下の通り。
7.報告
SonotaCo.JPフォーラムの同時流星計算用CSV ハブ (M.CSV exchange hub)に報告する。
1日ごとに投稿する人が多いが、1週間分や1ヶ月分をまとめて上げている人もいる。
<参考>
SonotaCo.JP :: トピックを表示 - AHD AR-MHD8206RHシステム
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